検証条件
『Frio』がIntelのLGA 775 プラットフォームでどのようなパフォーマンスを発揮するのか検証していきます。
検証に当たって利用した機材およびBIOS設定は以下の通りです。検証条件は『CPUクーラー検証レギュレーション for Intel LGA 775』に準じていますので、利用した負荷テストなど、詳しくはそちらをご覧ください。
検証機材一覧
CPU |
Core 2 Extreme QX9650 (3.0GHz/FSB:1333MHz/L2:6MB/TDP:130W)
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Motherboard |
DFI 『LP UT P35-T2R』 (Intel P35 Express Chipset + ICH9R)
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メモリ |
PATRIOT 『PSD24G800KH』 (DDR2-800(CL5) 2GB×2)
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ビデオカード |
S3 Chrome 430 GT (VRAM:GDDR2-1000-256MB)
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HDD |
HGST 『Travelstar 5K250』(250GB)
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電源 |
Silver Stone『SST-OP1000E-SP』(1000W)
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ケース |
無し (バラック組み)
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OS |
Windows 7 Ultimate 64bit
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グリス |
OCZ Freeze Extreme
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BIOS設定一覧
3.0GHz
3.6GHz
4.0GHz
FSB × CPU倍率
333MHz×9
400MHz×9
400MHz×10
CPU電圧
Auto(1.24500V)
1.30000V
1.42500V
C1E & EIST
ON
OFF
OFF
メモリクロック
DDR2-800 (400MHz)
DDR2-800 (400MHz)
DDR2-800 (400MHz)
メモリレイテンシ
CL5-5-5-15
CL5-5-5-15
CL5-5-5-15
メモリ電圧
1.904V
1.904V
1.904V
『Frio』と冷却性能を比較する製品として、以下のCPUクーラーを用意しました。
『Frio』のLGA 775用のリテンションは、バックプレートを使ったネジ止めタイプとなっています。バックプレートとビス以外は別パーツですが、LGA 1156/1366も基本的な取り付け方はLGA 775とほとんど同じです。
LGA775用リテンション
LGA 775/1156/1366共用バックプレート
固定用ナット
リテンションにゴムワッシャーを取り付け
リテンションをクーラー本体に取り付ける。
CPUクーラーを載せ、抑えながらマザーボードを裏返し、バックプレートを設置する。
4箇所をナットで締め上げる。(対角締め)
取り付け完了。
背の高いサイドフロー型CPUクーラーを、マザーボードの裏面側から締め上げて固定しなければならないため取り付けはやや面倒です。もっとも、リテンション側にネジが付いているため、しっかり押さえて裏返せば位置を見失うということはありません。
さほど難易度が高い訳ではありませんが、裏面側から固定する時に使うナットをマイナスドライバで締めなければならないのは困りものです。マイナスドライバでは横に滑ってしまいますが、もう一文字溝を切ってくれさえすればプラスドライバで締めることができるはずなので、このあたりは是非とも改善して頂きたいですね。
※ノースブリッジとヒートシンクが干渉したため、今回は上面排気方向で取り付けました。
TDP 130Wの『Core 2 Extreme QX9650』を、定格で動作させた際の冷却性能比較結果です。
ソフトウェア測定結果(HWMonitor 1.15)
実測結果(どこでも温度計2)
『Frio』搭載時のCPU温度は、シングルファン・デュアルファンとも今回比較を行った5製品の中で最も高い温度を記録しています。
『Frio』だけが大きく後れをとっているという訳ではありませんが、本来であればハイエンドCPUクーラーらしく競り合って欲しい『Megahalems』や『NH-D14』には大体3~5℃程度の差を付けられ、ミドルレンジのScythe『夜叉』と同等以下という結果はちょっと物足りませんね。
まぁ、いずれのファンとの組み合わせでも問題になるような温度までCPU温度が上昇している訳ではないので、定格で使う分にはどのCPUクーラーもかなり余裕のある冷却性能を持っているのは間違いありません。
取り付け方向が統一できていない関係で全てのクーラーを同条件とは言えませんが、周辺冷却については、いずれの温度も無難な数値を記録しており、サイドフロー型としては優れているわけでも劣っているわけでもない周辺パーツへの影響力は持っているようです。
このぐらいの温度であれば、少なくとも定格で周辺パーツが過昇温するようなことは無いでしょう。
『Core 2 Extreme QX9650』を定格の3.0GHz@1.245Vから、3.6GHz@1.300Vにオーバークロックして動作させた際の冷却性能比較結果です。 この条件では、C1EやEISTと言った省電力機能はオフにしています。
ソフトウェア測定結果(HWMonitor 1.15)
実測結果(どこでも温度計2)
定格時にも『夜叉』に後れをとっていた『Frio』ですが、この条件でもCPU温度は比較5製品中最下位となっています。
『ULTRA KAZE 3000rpm』搭載時には『夜叉』や『Venomous X』との差を一気に縮めていますが、それ以外のファンとの組み合わせでは3℃程度の差がついている条件も珍しくなく、『NH-D14』や『Megahalems』との差は定格時よりも拡大しています。
周辺冷却に関しては、同じ向きで取り付けている『夜叉』と比較すると、PWMチップやVRM部の温度が高めになっています。ファンアダプタが取り付けられていることもあり、ファンとヒートシンクの隙間から上下に漏れる風が少ないのかもしれませんね。
この条件でも周辺温度が危険なレベルまで上昇しているわけではありませんので、個人的に取りたてて問題視する必要はないと思います。「周辺パーツへの影響力は大した事は無いが、サイドフロー型CPUクーラーとしては及第点」という程度だとご理解いただければ良いかと思います。
『Core 2 Extreme QX9650』を定格の3.0GHz@1.245Vから、4.0GHz@1.425Vにオーバークロックして動作させた際の冷却性能比較結果です。 この条件ではC1EやEISTと言った省電力機能はオフにしています。
ソフトウェア測定結果(HWMonitor 1.15)
実測結果(どこでも温度計2)
冷却性能の限界が問われるこの条件ですが、結局『Frio』は定格時と3.6GHz時同様5製品中最も高いCPU温度となってしまいました。
3.6GHz時と比べると、『夜叉』や『Venomous X』との差は小さいように感じますが、『NH-D14』や『Megahalems』の2強には8~9℃もの大差を付けられてしまっています。流石にこの差は大きいですね…。
周辺冷却に関しては大幅に昇圧していることもあり、『KAZE-JYUNI 1900rpm』をシングルファンで搭載している状態では、電源回路のPWMチップの温度が90℃に達しています。デュアルファン化やオリジナルファンではそこまで高くありませんし、背面排気方向で取り付けることができれば温度の低下も図れそうですが、大幅な昇圧を伴うOCをされる場合は注意された方が良いでしょう。
ビジュアル重視で選ぶ? 性能も価格も中途半端な結果に…
今回の冷却性能検証では、比較するために用意した4つのCPUクーラーのいずれにも及ばないという結果になってしまいました。冷却性能に定評のあるハイエンドCPUクーラーは兎も角、ミドルレンジの『夜叉』に及ばないというのは流石に期待を裏切られた感じです。
『Frio』自体が冷えないCPUクーラーという訳ではありませんが、今の一級品と比較すると価格相応のCPU冷却性能を持っているとは言い難いですね。ファンが二基ついているとは言え、実売価格7,000~8,000円でこの性能ではコストパフォーマンス的にも難しいと言わざるを得ません…。
…うーん、静音志向でも無く冷却性能志向でも無い。そしてコスト重視という訳でもないので、なかなかポイントを見出すのが難しい製品ですね。
ビジュアルはそう悪くないですし、見た目で買っても損はしない程度の性能は備えていますが、空冷でより冷えるCPUクーラーを求める方には他の製品を検討された方が良いでしょう。
なお、今後LGA 1366プラットフォームの検証環境も用意する予定ですので、そちらで真の力を発揮してくれたらいいですね~。プラットフォームでそこまで差が出るとは考えにくいですが、既に過去のプラットフォームとなったLGA 775より、新しいソケットで性能が出るように作られたCPUクーラーである可能性は否定できませんから…。