Prolimatechの新型CPUクーラー『Armageddon』
Prolimatechの『Armageddon』は、140mm角ファンに対応したハイエンドサイドフロー型CPUクーラーです。『Megahalems』を引っ提げてCPUクーラー市場に参入したProlimatechの新型だけあって、その性能に大きな期待の掛る製品です。
標準で付属するリテンションは、Intel LGA 1156/1366のみのサポートとなっており、Core 2世代のLGA 775やAMD系のソケットは非対応とされています。ただ、LGA 775には取り付けられないこともないようです。(詳細は⇒こちら)
なお、ファンは同梱されておらず、別途140mm角25mm厚のファンを用意する必要があります。120mm角ファンやラウンドフレーム採用の140mm径ファンは取り付け不可ですのでご注意ください。
その他、『Armageddon』の大体のスペックは以下の通りです。
製品名 |
Armageddon
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形状 |
サイドフロー型(空冷)
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本体寸法 |
50(D)×144(W)×160.3(H)mm
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ベース部寸法 |
40×42mm(実測)
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ヒートパイプ |
6mm径×6本
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放熱フィン数 |
44枚×2(サンド)×(2ブロック) + 1枚(最上部)
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放熱フィン厚 |
最上部:0.6mm(実測)
それ以外:0.5mm(実測)
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本体重量 |
750g(ヒートシンクのみ)
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対応ファン |
140mm角25mm厚×2基
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付属ファン |
無し
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ファン固定具 |
金属クリップ×4個(ファン2基分)
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対応TDP |
非公開
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対応ソケット |
Intel:LGA 1156/1366
AMD:非対応
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固定方法 |
Intel:バックプレート+ネジ止め
AMD:非対応
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『Armageddon』に同梱されているリテンションの形状は、『Megahalems Rev.B』で採用されたものと似ていますね。最後に本体を固定するバーとネジが『Armageddon』の仕様に合わせて若干改良されていますが、固定方法としてはほぼ同一と言って良いかと思います。
相変わらずAMD用リテンションは同梱されておらず、現在市販されている『Megahalems』用のAMD対応リテンションキット『ARM-01』も基本的に使用不可となっています。Prolimatechには、もう少しAMDソケットへの対応を積極的に行って欲しいですね。
薄さが特徴のサイドフロー型CPUクーラー
『Armageddon』の構造は、ベース面がCPUから受け取った熱を6本の6mm径ヒートパイプによって2ブロックの放熱部に送り、ファンの風を受けて放熱するというものです。 …と、構造的にはオーソドックスなサイドフロー型CPUクーラーのようですが、大型サイドフロー型CPUクーラーとしては珍しい程放熱部が薄く作られています。
従来よりCPUとメモリの距離が短いレイアウトのマザーボードと、大型のヒートシンクを備えたメモリの増加したことで、最近のハイエンドサイドフロー型CPUクーラーの多くがメモリとの干渉問題を抱えていました。『Armageddon』は、放熱部の厚みを薄くする事でこの問題への対策を図った製品のようですね。
ヒートシンクの全高は160.3mmで、これはThermalright『TRue Black 120』の160.5mmとほぼ同等の高さとなっています。サイドフロー型CPUクーラーとしても高い方なので、ケースによっては側板との干渉が発生する場合もあるかもしれません。
Prolimatech Megahalemsとの高さ比較
『Armageddon』のベース面は表面にニッケルめっき処理が施された銅板です。表面には若干加工痕が残っており、めっき処理を施されていますが鏡面にはなっていません。
加工痕が残っているとは言っても、気になるほどの凹凸がある訳ではないので特に気にするほどではありません。ベース面自体は若干凸面になっているようで、スケールを当てると僅かなスキマが確認できます。『Megahalems』も大体こんなものですね。
ベース部とヒートパイプの接続部分に関しては、『Megahalems』同様ヒートパイプを潰さないようベース部側に溝を作った上でろう付けされています。ベース面が鏡面で無い点や若干凸面になッている点など、ベース部のつくりはほとんど『Megahalems』と同じと言った感じですね。
放熱部は2ブロックの放熱フィンブロックと、最上段のアルミ製0.6mm厚フィン1枚で構成されており、各放熱フィンブロックは0.5mm厚のアルミ製放熱フィン44枚を備えています。
放熱フィンとヒートパイプの接続部は、多くのクーラーで採用されている差し込み式では無く、『Megahalems』と同じく2枚の放熱フィンでヒートパイプを両側から挟んでろう付けするという方法を採用しています。このため、放熱フィンブロックが備えるフィンの枚数は44枚ですが、正確には88枚のフィンを使っているということになります。
最上段のフィンには、Prolimatechらしい(?)模様が刻まれていますが、全てのフィンに模様が付いていた『Megahalems』とは異なり、最上段以外のフィンはフラットなアルミフィンとなっています。
ちなみにこのアルミフィン。どこかで見覚えがあると思っていたのですが、どうやら『Megahalems』の外側のフィンとほぼ同じ形状のようですね。違いは模様の有無とファンクリップ用の切り込みが用意されたことぐらいでしょうか。
『Armageddon』にファンは同梱されておらず、ユーザー自身が自由にファンを選択することになります。
『Armageddon』に取り付け可能なファンは140mm角で25mm厚のファンのみで、Prolimatechは『Armageddon』に最適なファンとして、「回転数は800~1200rpm、ファンノイズは26dBA、風量は57CFM」という条件を挙げています。
ファンの固定には専用の金属製クリップを使用します。取り付け方としては、金属製クリップをファンに取り付け、その後CPUクーラーの切り込みにはめ込む形になります。
あまり見かけないタイプの固定クリップですが、個人的には取り付け自体はかなり楽だと思います。ただし、ファンの内側にクリップを差し込まなければならないため、140mm角タイプであっても少し変わったフレームを採用している場合には取り付けられない可能性があったり、取り付けようとした際にクリップが外れやすかったり(※)と、気になるところも少しあります。
※あくまで取り付け時の話で、ファン取り付け後はしっかり固定されているので脱落の心配は無さそうです。
各部の作り込み、仕上げのクオリティはハイレベル。
放熱部の薄さと、それに合わせるために凄い曲げ方をされたヒートパイプなど、個性的な形状に目がいきがちですが、第一弾製品の『Megahalems』同様、細部の作り込みや仕上げのクオリティは高く、ハイエンドCPUクーラーらしい製品であると思います。
ハイエンドCPUクーラーとメモリの干渉問題が顕在化しはじめた今、こういう思い切った形状のヒートシンクをリリースしたことは面白いですね。ただ、ヒートパイプをベース部付近で大きく開く形状にしてしまったため、ノースブリッジやVRMヒートシンクとの干渉問題が発生しており、「『Armageddon』は干渉問題を大幅に改善したCPUクーラーである」とは言い難いですね。
また、対応ファンが140mm角25mm厚に限定されるのも残念なところです。静音から超高速までラインナップされている120mm角ファンと違い、140mm角ファンの選択肢はかなり少ないのが現状です。今後140mm角ファンにトレンドが移っていくのかもしれませんが、まだ過渡期と言えるのかすら分からない現状では、120mm角ファンにも対応していた方が良かったのではないかと思います。
…と、書いていると妙にネガティブな内容になっていますが、最初に書いたとおりヒートシンク自体の作り込みや仕上げは間違いなくハイエンドCPUクーラーであると感じられるクオリティです。それ故に他の部分が気になるといったところです。
冷却性能検証では、こうした不満点に目を瞑れるくらいのパフォーマンスを発揮してくれると期待したいと思います。